妙法蓮華経_安楽行品第十四

法華経

みょうほうれんげきょう_あんらくぎょうぼんだいじゅうよん

折り返し地点

この安楽行品あんらくぎょうぼんで法華経の折り返し地点となります。お釈迦さまは一貫して、「これまで説いてきた教えはすべて仮の教え」であり「法華経ほけきょうこそが真実である」と教えられてきました。その証拠として、これまで成仏できなかったもの達の成仏が、次々と約束されてきました。みんな大いに歓喜して法華経を弘めることを誓いましたが、なぜか「他の世界」への布教を誓っています。お釈迦さま亡き後のこの娑婆世界は、とんでもなく悪い世界で、多くの障害が予言されますので、どうやらしり込みしているようです。そんな中、ひときわ目を引く八十億もの素晴らしい菩薩たちが、娑婆世界しゃばせかいでの布教を宣言し、その存在感を増しています。

安楽行品のストーリー

文殊菩薩もんじゅぼさつは驚いて言いました。

「なんと困難な約束をしたのでしょう!この八十億もの菩薩たちは、お釈迦さま亡き後のとんでもなく悪い世界で、いったいどうやってこの法華経を弘めるのでしょうか!?」

するとお釈迦さまは答えます。

「優れた菩薩たちは、苦労することなく実践できる”安楽行あんらくぎょう”というやり方を身につけている。それには四つある。

その一は”身”の立ち居振る舞い、すわなち、日ごろの行いと、居るべき場所を決めていることだ。日ごろの行いについては、穏やかな心を持ちながら忍耐強く、何事にも動じないこと。何が起きても疑念や差別の心を抱くことなく、起きたことはそのありのままを受け止めることだ。場所は、心静かに考え事ができる場所にいるべきであり、金持ちや政治家、芸能人、逆に一般庶民、また、おかしな宗教を広める人等々、世俗的なありとあらゆる人のいる所には近づいてはならないのである。ただし、この教えを求めるものには弘めるがよい。

その二は、”口”から発する言葉に注意することだ。そもそも優れた菩薩とは、決して他人や他の教えの悪口を言わないし、逆に褒め称えることもしない。心穏やかに教えを説いているから、常に安住した境地にいるのだ。

その三は、”こころ”がまえだ。決して嫉妬や媚びたり、ごまかしや争いの心を持つことなく、真面目に、そしてすべてのものが幸せになれることだけを想うのだ。

その四は、誓願だ。つまり、私の亡き後、どんなに悪い人々がたくさんいようとも、『私はみんなを必ず幸せの境涯に導くのだ』と強く心に誓うことだ。困難な目に遭った時、この誓いを持つものは、諸天に護られるだろう。」

髻中明珠の譬え

お釈迦さまは続けて教えられました。

文殊菩薩もんじゅぼさつよ。みんな、この真実の方である法華経を知らない。知らないどこか、みんなその名前すら聞いたことないだろう。それはなぜか。一番大切で最も奥深い教えであるから、これまで説いたことがないのだ。

例えば、ある国に絶対的な権力をもつ偉大な王がいたとしよう。すべての民はこの王に従う。王は、よい働きをしたものに褒美を与える。金品や土地や名誉など、さまざまなものを与えるが、ただ一つ、決して与えることのないものがある。それは王冠だ。王冠だけは、決して与えることはない。なぜなら、王冠は、唯一、王の頭にあるべきものであり、それこそが王の証だからである。このように、仏もさまざまな教えを説いてきたが、ただ一つ、この法華経だけは説かなかった。なぜならば、一番大切で最も奥深い教えだからだ。だから今日初めて、皆のものにこの教えを説いたのだ。

私が亡き後、この娑婆世界はとんでもなく悪い世界となる。その悪い世界の中で正しい行いをしようとすれば、さまざまな妨害に遭い、危害を加えられることだってあるだろう。しかしその悪い世界の中でも、この法華経を信仰するものは、諸天が守護するだろう。悪い人々は危害を加えられなくなるだろう。そうして、苦労することなくその身は安楽にして、夢を見る。王子として生まれたあなたは世の中のすべてのものを幸せの境涯に至らしめるために王位を捨て、出家する。菩提樹の下で瞑想をして悟りを開き、法華経を説いて数えきれないほどのものを救うだろう。そうしてやがて、灯が消えるように滅するのだ。このように、後の悪世の中で一番大切な法華経を弘めるものには、このような功徳を得るのである。」

まとめ

お釈迦さま亡き後の布教について、しり込みするもの達がいたため、お釈迦さまは四つの方法を教えられました。さらに「髻中明珠けいちゅうみょうじゅの譬え」を使って、法華経が一番大切な教えであると再度教えられ、その功徳を明かされました。一方でとんでもなく悪い世界の中でも布教を誓い、存在感を増してきた八十億もの菩薩たち。彼らがお釈迦さま亡き後の中心メンバーとなるのでしょうか?お話は次回へと続きます。

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