みょうほうれんげきょう_しんげほんだいよん
今の感覚に近い?
「インドの山奥で修行して…」のイメージではないかも知れません。今も30以上の言語が残こる連邦共和国のインドは、当時は小国の集まり。お釈迦さまは国際結婚ですから、異文化交流があったのでしょう。俗にいうバラモン教=実は様々な民族宗教の総称です。また、釈迦国は合議制でした。つまりお釈迦さまは、今の東京の郊外みたいな環境で、皆の幸せを願っていたのかも知れませんね。さて今回は、諸国を放浪した男が主人公です。
信解品のストーリー
徳を積んだ僧、須菩提や目連たちは、初めて聞く真実の教えを聞き、また弟子の一人である舎利弗の成仏が約束されたことを大変喜び、心を新たにしました。そして襟元を正してこう言いました。
「私たちは僧でありながら、もうろくしてしまったのでしょう。お話を何度も聞いたはずでしたが、広く真理を求めることを忘れていました。六道からの解脱ばかりに執着し、耳を閉ざしていたのでしょう。しかし舎利弗を見て、未だかつてないほどに歓喜しております。求めずしてたいへんな宝物を得た思いです!私もたとえ話を使ってその教えを明らかにしようと思います。どうかお聞きください!」
長老が譬え話をする
ある若い息子が家出をした。意気揚々と外国に行くも、若さゆえか仕事は失敗続き。次第にお金は底をつき、家を失い放浪生活を続けて早五十年もの歳月が流れていた。疲れ果てた息子は、ある日故郷に戻ってくる。一方の父親は大長者となっていた。大金をはたいて八方手を尽くし、息子を探してはや五十年。毎日息子を憂い、戻って仕事を継いでくれたらどんなに良いかと思っていた。息子はそのことを知らない。そうして偶然にも父の大邸宅の前を通りかかる。その邸宅の豪華さたるや、目を見張るものがあった。その中で父は王侯貴族たちと商談をしていた。息子はその豪華さに圧倒され、こう思う。
「しまった!王か大臣の家に来てしまった!ここは私みたいな貧乏人の来るところではない。ぼやぼやしてると怖い目に遭ってしまう。どこかよその貧しい地域に行こう」。
父親は、みすぼらしい姿の男を見るなり、それが自分の息子だと一目で分かった。使用人に息子を連れてくるように命じるのだが、父親と知らない息子は、黒服の男たちに連れてこられ、恐怖のあまり気絶してしまった。その様子をみた父親は、息子のすべてを悟った。息子は父親が思うような高い志を持ち合わせた人間には育っていなかったのだ。今真実を告げても、息子は受け入れないだろう。会社を継いでもすぐに潰してしまい、多くの使用人を不幸にするだろう。そう思うと、いったん息子を開放する。
そこで父親は方便という巧妙な手段を考える。まずは浮浪者を二人雇いこう伝えさせた。
「あのお屋敷に働き口があるぞ。給金は二倍!仕事はトイレ掃除だ。一緒に行こうぜ」。
こうして、父の邸宅で働くこととなり、近くに粗末な家を与えられた。こうして数か月後、父親は泥で体を汚し粗末な服に着替え、掃除用具を持って息子に近づいた。
「おい、男。私は愚痴も言わず真面目によく働くお前のことを気に入った。日雇いではなくずっとここで働きなさい。その代わり、給料は倍あげよう。なぁに、老いぼれた私が雇うのだから、気にすることはない。米でも塩でも食器でも、生活に必要なものがあれば言いなさい。これからお前のことを、私の子供と思うようにする」。
息子は喜ぶが特に何かを欲しがることもなく、トイレ掃除人に満足していた。そうして、公然と長者からの信頼を得た男は、徐々にいろいろな仕事を任せられるようになり、また二十年の歳月が流れた。息子は会社の取締役にまで昇進し、身なりもそれなりに整ってはいたが、欲はなく、相変わらず粗末な家に住んでいた。が、父親は息子の中に少しずつ高い志が芽生えてきていることを気付いていた。そうして、真実を明かさぬまま、父親の死期が近づいてきた時、親族や大臣らを呼び集め、初めて息子の前で、実の息子であると打ち明けたのだ。財産のすべてを手にした息子は、その時初めて自分は父親に育てられていたことを悟り、大いに感激し、こう思う。
「私は自ら願うことがなかったけれども、自然にすべてを得ることとなった」
求めず、自然に得る
たとえ話を終えると須菩提は言いました。父親の大長者とはお釈迦さま、息子とは私たち弟子のことです。本当の悟りとは何かが分かった気がします。お釈迦さまは私たちの汚れを洗い流し、徳の衣を着せてくれました。私たちはこれまで、目先の日銭に満足していたのです。執着が強く目先の事ばかり求め、他人に施すことを求めていなかった。だからお釈迦さまは私たちに合った巧妙な手段で導いてくれたのですね。今、私たちは、自ら求めずして、自然に仏様の大いなる宝物を得ることができたのです。
少々長かったので、今回はここまでにしますが、ここに出てきたたとえ話を「長者窮子のたとえ」といいます。


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